令和7年4月から義務化:地域連携推進会議とは
令和7年4月から地域連携推進会議の実施が義務化されます。
この新しい制度の導入に向けて、今年度3月までが準備期間となります。
この記事では、事業者がどのように準備を進めるべきか、そして行政書士がどのようなサポートができるのかについて解説します。
地域連携推進会議とは~制度の背景~
共同生活援助は、障害のある方が家庭的な環境で暮らし、地域社会の一員として自立した生活を送るための重要な施設です。
しかし、これまで多くのグループホームは地域社会から隔離された環境で運営されてきた経緯があります。
地域住民との交流が少ないために社会的孤立し、外部からの目が行き届かないために支援の質の低下や虐待などの問題が見過ごされることがありました。
そして、いまだ障害者に対する偏見も根強く存在しています。
障害者もひとりの人間として自由に社会参加する権利、就労し自立する権利がありますが、そのためは地域での協力、支援も必要です。
こうした背景を踏まえ、今年度から利用者と地域住民や有識者などでつくる「地域連携推進会議」の設置が努力義務化することになりました。
会議ではホームの運営内容を報告したり助言を受けたりするほか、住民がグループホームを訪ねて暮らしの様子を見学します。
来年度からは会議の設置を義務化します。
地域連携推進会議には、以下の目的や意義があります。
①利用者と地域との関係づくり:
利用者が地域の一員として生活できるよう、地域の人々との関係を築くことが重要です。
会議や構成員の施設訪問、利用者の地域イベントや行事などへの参加などにより、地域の人々との顔の見える関係を構築します。
②地域の人への施設等や利用者に関する理解の促進
外部の目が入りにくくなりがちな施設等を訪問を通じて、利用者の日常の生活の様子や施設の運営状況を確認してもらいます。
利用者や事業所に対する理解を深め、偏見をなくし、施設と地域の繋がりを強化します。
③施設等やサービスの透明性・質の確保
地域の関係者が外部からの目として参加し、受けた印象や気付いた点等について報告してもらうことや、施設等の運営上の工夫や改善点等について意見交換する時間を設けることにより施設運営の透明性を高め、サービスの質を向上、確保します。
④利用者の権利擁護
障害により言葉で意見を伝えることが難しい利用者の思いや意見を聞き取り、利用者自らが希望する生活を送るための支援を行います。
意見表出そのものが難しい利用者に対しては、意思決定支援にどのように取り組んでいるか等を地域の人に伝えます。
具体的に義務付けされたこと
会議の開催と報告 利用者及びその家族、地域住民の代表者、共同生活援助について知見を有する者並びに市町村の担当者等により構成される地域連携推進会議を開催する。 (おおむね1年に1回以上) 運営状況を報告するとともに、必要な要望、助言等を聴く機会を設けなければならない。
事業所見学 会議の開催のほか、おおむね1年に1回以上、会議の構成員が事業所を見学する機会を設けなければならない。
記録の作成と公表 会議の報告、要望、助言等についての記録を作成し、これを公表する。
外部の者による評価及び当該評価の実施状況の公表とこれに準ずる措置として都道府県知事等が定めるものを講じている場合には、適用しない。
日中サービス支援型における協議会への報告義務は、これまでと同様。
※上記規定は、令和6年度から努力義務化、令和7年度から義務化。
会議の構成員として想定されるのは以下のような人物です。
利用者代表 グループホームの利用者自身が参加することで、直接的な意見や要望を反映させることができます。意思表示が出来ない利用者の場合には、成年後見人や家族に代理してもらう等の工夫が必要です。そうした場合であっても、代理人だけでなく利用者本人にも会議に参加いただくなど、できる限りご本人の意思を丁寧に汲み取りながら会議を運営することが望ましいです。
家族代表 利用者の家族からの視点を取り入れることで、利用者の生活全般に関する意見や提案が得られます。 利用者家族が施設等の近隣にいない、利用者や施設等と家族との関係が良好でないなど、利用者家族の参加が難しい場合は、成年後見人、利用者家族と関わりのある支援者、家族会の会員など、利用者家族の代弁者となり得る立場の方に参加いただくことが望ましいです。
地域関係者 地域社会との連携を強化し、地域の理解と協力を得るために必要です。 地域の関係者は、例えば、自治会・町内会などの地域団体の方、民生委員、商店街の方、学校関係者、地域で活動しているNPO法人、地域の障害当事者などが想定されます。 なお、上記の他、日常的な付き合いがある場合もあることから、施設の近隣の住民を選出することも有効です。
福祉に知見のある人 他の障害福祉サービスの事業者や障害関係の事業を実施している事業者、学識経験者、福祉関係の事業を実施しているNPO法人など、客観的または専門的な立場から意見を述べることが出来る人のことを言います。 ただし、同一法人またはその系列法人に所属する者を選任することは望ましくありません。
経営に知見のある人 障害福祉サービス、介護保険サービス、児童福祉施設の運営等の経営に携わっている人や、財務諸表等から経営状況を把握しアドバイス出来る人を想定しています。
行政担当者 市町村職員にも利用者や地域のことを知っていただく良い機会ともなります。 ただし、所在市町村に多数の施設等がある場合等、毎回の参画は難しい場合もあります。西宮市では担当者派遣等は現在は未確定であり、現実には難しいとの回答でした。他市においてもそのような状況が推測できます。(令和6年8月6日現在) 基幹相談支援センターの職員や市町村(自立支援)協議会の構成員など、市町村担当者以外の公共性のある方に参画いただくことを検討する必要があります。
これらの構成員がバランスよく揃うことで、地域連携推進会議は多角的な視点からの意見交換が可能となり、より効果的な運営が期待されます。
事業者が行うべき準備とは
では一体、何を準備すれば良いのでしょうか。
指定を受けた事業所単位ごとに地域連携推進会議の実施(年1回以上)、複数の共同生活住居がある場合は、住居ごとに年1回以上、地域連携推進員が訪問する機会を提供しなければなりません。
事業者が行うべき準備は以下の通りです。
現状分析と課題の把握 現在の運営状況を確認し、地域社会との連携における課題を把握します。
地域連携推進会議構成員の選定・依頼 会議の構成員を選定し、役割分担を明確にします。利用者代表、家族代表、地域住民代表など、多様なメンバーの参加を促します。
会議の運営ルール策定 会議の開催頻度や開催場所(オンライン可)、議題の設定、議事録の作成と公開方法など、見学訪問方法などの運営ルールを策定します。
関係機関との連携強化 地域の関係機関(行政機関、医療機関、福祉サービス事業者など)との連携を強化し、情報共有の体制を整えます。
研修と啓発活動 会議のメンバーに対する研修を実施し、地域連携の重要性や会議の目的を理解してもらいます。また、地域住民への啓発活動も行います。
行政書士ができるサポート
弊所では、開催準備からサポートをしたいと考えています。具体的には以下の形で関わらせていただきます。
地域連携のコーディネート 地域の関係機関との連携をコーディネートし、情報共有や協力体制の構築をサポートいたします。
研修の企画・実施(同行) 会議メンバーや事業者に対する研修を企画・実施し、地域連携推進会議の重要性や具体的な運営方法について説明いたします。 また弊所では、世話人業務や移動支援業務を行っている立場からの同行も可能です。
議事録の作成 地域連携推進会議で施設等が行った報告、構成員から受けた要望、助言等についてまとめます。
地域連携推進会議は、計画実行の難しさはありますが、地域社会との連携を強化し、利用者の権利を守り、社会的な自立を支援するためには欠かせない取り組みです。
単なる義務として取り組むのではなく、上記の目的を達成し、より良いサービスの提供や利用者の「地域での暮らし」の推進につなげていく意識を持つことが大切です。
地域連携推進会議が施設等と地域がつながるきっかけとなり、またそのつながりを深め続けていく場となるようなサポートをさせていただきます。
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